『弱さから学ぶもの』
コグトレについて職場内研修を行ったあと、受講者の感想を聞くと「1つのことに気をとられると他のことは疎かになる」「答え合わせはドキドキした。合っているとほっとした」「自分の苦手さが分かった」などがよく聞かれます。
研修ではワークシートを体験してもらうようにしています。受講者の先生方は、その出来に一喜一憂し、笑いがこぼれ、和やかな雰囲気が漂います。指導者といえど、みんなそれぞれに出来・不出来があり、得手・不得手があり、それを“体験”のなかで味わいつつも、弱さを安全に共有できた安堵感ともいえるでしょう。
しかし、研修ではその様子を感じつつも、受講者にこう問いかけてみます。-「ではワークシートの結果をみて、できていない人は研修予定時間の後に居残りで指導します」-。和やかな雰囲気が一瞬張り詰めます。もちろんすぐにそれは冗談であることがわかり、再び和やかな雰囲気が戻ってきます。普段は子どもを指導する(教育する、支援する)者であっても、自分が評価を受ける立場になることで分かるものや感じるものがあります。先の感想などはまさにそうでしょう。
さて、子どもへの指導はどうでしょうか。苦手なところ、できないところをどうやって教えようとしているでしょうか。受講者として感じた、あの“張り詰めた”感覚にならないようにするにはどうしようか、と考えることはあるでしょうか。苦手なところを上手くできるようにするために、これまで信じられてきた育て方とは、苦痛を介して習得することに偏りすぎているかもしれません。学習の問題、感情の問題、行動の問題、対人関係の問題、しつけ、いじめ、虐待・・・
苦痛をなるべく減らして、上手くやるための土台・基礎を作る、考える幅を増やし、脳のネットワークを拡げる。コグトレが教えてくれる対象は子どもだけでなく、我々大人も同じであろうと思うのです。
文責:静岡コグトレ研究会 代表 山中博喜(静岡県中央児童相談所)